田中
現在の事業を手掛けられたきっかけを教えていただけますでしょうか。
社長
学生の頃、私は何がしたいのか真剣に考えていた中で、最終的に「スカッとした心からの笑顔を増やしたいんだ」という答えに行き着いたのです。私のゴールは、自分や自分の家族や友達を含め、たくさんの人にスカッとした笑顔を増やす事だと思ったのです。
沖田
スカッとした笑顔ですか。
社長
苦笑いや妥協のない、心からの笑顔です。私は学生時代、電気自動車を作っていました。電気自動車は、エネルギー効率が高く、排気ガスを出さないなど、多くのメリットがあります。しかし発電方法によっては原子力に依存する可能性があり、技術が進むにつれて、どこかで苦笑いが生まれてしまいます。
自分が心から信じられるもの。これを見つけるのが意外に難しいのです。他にも色々と考えた中で「毎日の生活の中で料理が楽しみになれば、心からの笑顔が増える」という事実に気付いてしまったのです。
沖田
料理から笑顔を増やすのですね。
社長
おいしい物を食べる事は、良い映画や景色に出会った時のハピネスと比べても引けを取りません。しかも、料理は短時間に一人で作れますが、多大な時間とお金を掛けて作る映画と同じくらいの喜びを相手に与える事ができます。毎日の作業になりがちの料理を楽しみにするきっかけを増やしていくという、このボタンさえ押せば、笑顔が増えていくとわかってしまったのです。こんな素敵なボタンを押す会社が他に無かったので、「私が押さなくちゃ!」と思ったのが始まりです。
田中
なるほど!そのような経緯でクックパッドが生まれたのですね。
社長
実は、私はまだやりたい事の1%ほどしか実現できていません。“料理が楽しくなる”を頭につけると、まだまだやりたい事は無限に広がっていくのです。例えば、“料理が楽しくなる車”なんていいですよね。
沖田
え!それはどういうものなのでしょうか。
社長
おいしい物をレーダーで感知するカーナビゲーションを搭載していて、生ものを買っても臭くならないような脱臭・消臭機能がある車なんていいですよね。他にも、“料理が楽しくなるレストラン”も考えられます。食べておいしいレストランはありますが、料理ができるレストランはまだ無いですよね。
田中
頭にキーワードをつけるだけで、どんどん発想が膨らんでいきますね! では、大変恐縮なのですが、私に今後の社会人生活に向けてのアドバイスをいただけますでしょうか。
社長
やりたい事をやる事です。究極の利己主義で良いと思います。
人間の「やりたい」という気持ちの中には、自分だけでなく、必ず相手も笑顔にしたいという気持ちが内包されているのです。人を悲しませたいとは思わないはずですし、自分の得意な事をしている時は楽しいので、自然と沸き起こった気持ちに忠実に、とことんやりたい事をやってほしいと思います。
田中
どうもありがとうございます。では、佐野社長が気分転換にされる趣味はございますか。
社長
会社に来るのが楽しいので、会社自体が趣味のようです。何か考えたい時は、散歩や遠出など、いつもと違う空間に身を置く事が多いですね。最近は、ふと思い立ってサンフランシスコに行ってきました。
沖田
サンフランシスコですか!
社長
今後クックパッドをどんな会社にしていこうかと考えていたら、気になる会社が集まっているサンフランシスコに行きたくなったのです。今、クックパッドには優秀な人が集まり、良い方向に向かってきています。2人でやれば2の力が出せるような足し算の組織になってきたのですが、2人で4や10になる掛け算の組織にならないかというのが今のテーマなのです。何かヒントを貰おうと、サンフランシスコの様々な企業に行って話を聞いてきました。
沖田
それでサンフランシスコに行かれたのですね!
社長
例えばGoogleさんに話を聞いてわかったのは、社員が1万人くらいの大きな組織にも関わらず、一人ひとりの社員さんは自分の役割を明確に認識できていて、会社全体のミッションにどう結びついているのか強く意識できている事です。それをサポートするための取り組みとして、自分達の作った物を自分達でもっと使っていこうというプロジェクトを推進していました。何と会議室の予約を行う際も、Google Earthを使っているんですよ(笑)。
サンフランシスコに行って、クックパッドがもっとがんばらないといけない所はもちろん、逆に弊社の良い所も見えてきました。
田中
ありがとうございます。では、最後に夢を教えていただけますでしょうか。
社長
一つは、私が死ぬ時にどんな人生だったかなと振り返って、「スカッとした心からの笑顔を増やせたな」と思って死んでいく事です。
もう一つは、世界に真似されるような会社になりたいです。クックパッドをやっているのは、日本人だからです。日本食の奥深さ、盛り付けの美しさ、多様性など、世界に誇れる食文化が日本にはあります。ですから、クックパッドが「料理が楽しみです」という日本人を増やして、ハッピーな世の中を作っていき、それを見た世界の人々が「日本人は、どうしてあんなに楽しそうなんだろう!?」と真似をして、料理によるハッピーが世界に広がっていくようにしていきたいと思います。
田中
本日は、大変貴重なお話を誠にありがとうございました。
沖田
どうもありがとうございました。
キッチンを囲んで、楽しそうに料理する社員さんの笑顔から、佐野社長の「毎日の料理を楽しみにする事で、スカッとした笑顔を増やす」というミッションが手に取るようにわかりました。
「まだまだ世の中楽しくなる!」と、料理が楽しくなる車、レストラン、銀行……おもしろいアイディアをたくさん話してくださった佐野社長。社長の頭の中にある夢が実現した世の中を想像して、私自身とてもわくわくした気持ちになりました。次回、七夕の日に開催されるという料理バトルには、是非私達も参加させてくださいね!
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